« アニメ「墓場鬼太郎」-和紙テクスチャ使いまくり- | トップページ | 「ベクシル 2077日本鎖国」-志村ケンの忍者コントを見習ってほしい。- »

2008/01/18

「毛皮のエロス/ダイアン・アーバス 幻想のポートレイト」-デヴィッド・リンチ版が観たかった。-

毛皮のエロス~ダイアン・アーバス 幻想のポートレイト~

【自宅にてDVD】ネタバレします。

伝説的な写真家ダイアン・アーバスの生涯をモチーフに作られた本作。
ダイアン・アーバスと言えば、異形の人々を被写体にすることで知られ、自身も自殺で生涯を閉じ、作品のタイトルが“無題”であると、謎に満ちているのだが、本作は非常に分かりやすい。
整理整頓され過ぎているくらいだ。
その事は主人公のキャスティングにも現れている。

保守的な正統派美人のニコール・キッドマンが、これまた保守的なアメリカの中産階級の典型的な装いで登場する。
良き夫とカワイイ娘達がいて幸せだが、いまいち満ち足りない日々を送っているのだが、そこに多毛症の男(ロバート・ダウニー・Jr)が越してくる。
この男と知り合う事により、異質な“向こう側”の扉が開かれる。
多毛症の男に深くのめり込むにつれて、保守的な顔立ち、装いのキッドマンが少しずつラフに淫らに変貌してゆく。
例えるならば、真面目だった同級生の女の子が夏休み明けにヤンキーになってたくらいの分かりやすさだ。
その“夏休み”の部分を「不思議の国のアリス」になぞらえて紐解いたのが、この映画だろう。
しかし、予備知識として「不思議の国のアリス」を下敷きにしていると知らなかったとしても、全く問題は無い。
本編で、あからさまに明示しているからだ。
ニコール・キッドマンは男に会いに行く時には“アリス”のトレードマークである“青い”ドレスを身に着ける。
また、劇中で子供達に「不思議の国のアリス」の絵本を読み聞かせるシーンもある。
ちょっと、直球過ぎるような気がした。
更にダイアン・アーバスの作品が何故、無題なのかについても一つの解答を提示する。
至れり尽くせりなのだが、映画としては面白味がない。

僕はダイアン・アーバスについて正直良く知らない、写真もスタジオボイスか何かで少し見たくらいで、「シャイニングの双子の元ネタだよなぁ」程度の知識だ、当然、伝記も読んでいない。
しかし、きっとダイアン・アーバス自身が何故、写真のタイトルが“無題”なのかについて明言はしていないはずだと思うのだが、どうだろう。
明言してしまっては、“無題”にした意味がなくなってしまうからだ。
※タイトルを付ける前に自殺してしまったのかもしれないが。
いずれにせよ“無題”であることによって、その作品を目にした者自身が想像するしかないのだが、それが作品に接した時の面白味だろう。
映画も同じだと思うのだが。
しかし、本作は“幻想のポートレイト”とタイトルにあるが、観客に幻想させない、想像させない。
全てが用意されている。
“幻想”というよりは“解釈”だ。

仮にデヴィッド・リンチが本作を監督したら、どうなっただろうか?
リンチの映画でもウサギ男や、普通の人が異様な世界に巻き込まれる等、「不思議の国のアリス」に影響を受けているはずだ。
また、異形の人々に対する眼差しなど、本作と共通するところは多々ある。
きっと、デヴィッド・リンチならば、ダイアン・アーバスの謎は謎のまま、観客に投げ出すだろう。
分けが分からないが、刺激的な映画になったに違いない。
有りもしないデヴィッド・リンチ版が観たかった。

ただ一つ、この映画でのダイアン・アーバスは満足したのだろうか?
彼女が愛したのは毛むくじゃらの彼であり、素顔を見せた彼では無いと思うのだが。
たとえ結ばれたとしても、心残りではないのだろうか。
永遠のお預け状態というか。
本編で直接的に明示された彼からの置き土産よりも、このことの方が写真を撮り続ける動機になったように思ったのだった。
本作の唯一の謎だ。

監督:スティーヴン・シャインバーグ
原作:パトリシア・ボズワース 『炎のごとく 写真家ダイアン・アーバス』
脚本:エリン・クレシダ・ウィルソン
撮影:ビル・ポープ
衣装デザイン:マーク・ブリッジス
出演:ニコール・キッドマン ロバート・ダウニー・Jr タイ・バーレル ハリス・ユーリン

【関連サイト】
□毛皮のエロス/ダイアン・アーバス 幻想のポートレイト:公式サイト
http://kegawa.gyao.jp/

□DIANE ARBUS - PHOTOGRAPHS:ダイアン・アーバスの作品が見れます。
http://www.artphotogallery.org/02/artphotogallery/photographers/diane_arbus_01.html

炎のごとく―写真家ダイアン・アーバス
パトリシア ボズワース 名谷 一郎
4163445803

Diane Arbus: An Aperture Monograph (Aperture Monograph) Diane Arbus: An Aperture Monograph (Aperture Monograph)
Diane Arbus

Diane Arbus: Magazine Work Tulsa Public Relations: Public Relations William Eggleston's Guide Lee Friedlander: Self Portrait

by G-Tools

1月 18, 2008 at 01:18 午前 映画・テレビ |

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/146059/17733304

この記事へのトラックバック一覧です: 「毛皮のエロス/ダイアン・アーバス 幻想のポートレイト」-デヴィッド・リンチ版が観たかった。-:

» mini review 07252「毛皮のエロス ダイアン・アーバス」★★★★★★★☆☆☆ トラックバック サーカスな日々
過激な題材によって写真芸術の概念に一石を投じた、天才写真家ダイアン・アーバスにオマージュを捧げる官能ラブストーリー。多毛症の隣人との出会いをきっかけに、貞淑な妻から自立した写真家へと変化していくヒロインを『めぐりあう時間たち』のニコール・キッドマンが演じる。監督は『セクレタリー』の異才スティーヴン・シャインバーグ。ダイアン・アーバスの人生に、独自のイマジネーションで肉薄した監督の手腕が光る。[もっと詳しく] 原初のエロスに震える自分。ダイアン・アーバスは「アリスの国」に招き寄せる。 あろうことか... [続きを読む]

受信: 2008/01/28 18:18:27

コメント

TBありがとう。
>“アリス”のトレードマークである“青い”ドレスを身に着ける。
なるほど、それは、連想しなかったな。
でも、保守的できっちりとした服装が、だんだん大胆になっていくところは、ゾクゾクしましたね。

投稿: kimion20002000 | 2008/01/29 21:32:43

>kimion20002000さま
TB、コメントありがとうございました。
主人公ですが、確かに保守的であればこそ、その後の変貌が引き立ちましたね。
配役的にはニコール・キッドマンは合っていると思いました。

投稿: IZO | 2008/01/30 2:57:19

コメントを書く